【REBIRTHDAY】 # 7


パキリ、と音を立てて中心に皹が入り、彼の心が砕け散る瞬間を見た。



戦闘兵器の如く無機質なその貌の下を暴いてやろうと、蛮は邪眼で雷帝の精神を蹂躙した。
覗き込んだその双眸の奥で、雷帝の心は少しずつ少しずつ、止まることを知らず砕けてゆく。
それは、注ぎ込まれた熱湯に耐えきれずに割れる薄いガラスのよう。
静けさを湛えて崩れ落ちてゆく様は、いっそ哀しいほど美しくて、蛮は息をのんで見つめた。




雷帝という魔王の鎧を剥がしてみると、中身は絶望に満ちた苦しみを身体いっぱいに抱えた、幼さの残る少年だった。




あたりに散らばったココロの破片。
意識を取り戻した彼は、それらを掻き集めることなく、ただ一心に目の前の蛮に焦点をあわせようとした。
その目が言う。



寂しい、と。



圧倒的な力で身を固めながら、その内には胸を張り裂く痛切な悲鳴。
声にならない叫び。
似ている。
なんて自分たちは似ているのだろう。
名前を問えば、かすれる声で弱弱しく答えた。
餞別だと、その名を呼んでやった。




すると、その目が微かに力を持って、崩壊が止んだのだ。




必死に、何かを伝えようとする。
その時、蛮は気付いた。
雷帝というパンドラの箱の中は、抗い難い大きな波に飲み込まれ、救済を叫ぶ魂の叫びが詰まっていた。耳を聾するような苦悶に満ちたうめきだ。
しかし、箱の底には、小さくてとても弱弱しいしいけれど、確かに光りを放つ心の一欠けらが残っていたのだ。
人を慕う、甘く強い輝きを持つ想い。
ほんの僅かでも、眩しく輝く想い。
それを見取った瞬間、憎悪にも似た嫉妬が蛮の身を焦がした。



この男はこんなになってもまだ、人を信じたいと願うのか……。



焼け付く感情に突き動かされて、首にかけた手に力を込める。
自分がとうに手放したはずのものを、いまだ後生大事に抱えているのが腹立たしい。


諦めた…?
本当に?
…………女々しい感情はとうの昔に切り捨てたはずだ。
この胸のどこを探ったってそんなものは―――――。


この男の目はイヤなことを気付かせようとする。





蛮に触れようと伸ばされたその手が、力を失ってぱたりと落ちた時、
血と煤に汚れた雷帝の頬に涙が一筋こぼれた。









まるで、ひび割れた心の残骸のように。