【なんでもない一日 (おわり)】
| 公園のわきに止めたスバルの緑の車体にも、木々の長い影が落ちていた。 ボンネットに散った落ち葉を軽く手で払い落としてから、鍵を開けて運転席に乗り込む。 全開にした窓に肘をついて、煙草に火をつけた。 空になった赤マルの箱を軽く握り潰してダッシュボードに放ると、フロントガラスに当たってカツンと軽い音を立てた。 変わらないあたりの風景を眺めて一服しながら、今日も一日が終わってゆくことを思う。 夕闇に、なんでもない一日が飲み込まれてゆく。 変わらない日常。 いつもと同じ今日の終わり。 静かだった。 この静けさは、この先も変わることがないだろう。 ひとりの車内。 助手席は、永遠に空席のまま。 乾いた風が吹き、公園を囲む木々の枝という枝をゆすっては、浜辺に打ち寄せるさざ波のような音を立てた。 蜩が夏の凋落を告げる。 …………銀次。 お前がいなくなって三度目の夏が逝く。 |