【なんでもない一日 (はじまり)】
| スバルをいつもの公園前にとめてエンジンを切る。 途端にいい加減ポンコツになってきた煩いエンジン音が消えて、あたりの静けさが車内に流れ込んできた。 スバル360。 もう生産されなくなって久しい車種だ。 俺が奪還屋を受け継ぐと同時に譲り受けた車だった。 そういえば車と一緒に駐禁切符までついてきた。 あの時は警察署でひと揉めしたっけ。 いくらポンコツでも大事な車だから、しっかりと鍵をかけておく。 キーをポケットにしまいながら、ふと、愛車の緑に光るボンネットに木陰が揺れているのに気付くと、俺は空を仰いだ。 既に日は高い。 とっくに正午をまわった時間だ。 頭上にかかる公園の木の枝の間からは空がのぞいていた。所々薄い雲がかかってまだらな水色に見える。 ゆらゆらと揺れる日差しに目を細めてから、俺はいつもの店に向かった。 HONKY TONKまでは、ここから徒歩で10分弱。 黄色い木の葉がふるえる 木の葉が降っている やさしいもの なつかしいもの 全てが――――――― 遅く起きた朝の、なんでもない一日の始まり。 |