力が欲しかった。


赤い血が止め処なくあふれるのを、なす術もなく阿呆のようにただ眺めているだけで。
腕の中から奪われてゆく体温。次第に浅くなる呼吸。
目の前で零れ落ちた、か細い命。
命の終わりは、その尊さに反して呆気ないほどだった。
それが、紛れもない現実だった。




力が欲しかった。
他の追随を許さぬ、強大な力が。
全てがひれ伏す力。圧倒的な力。
たとえ周りが火の海にのまれようとも、構いはしない。




この手に力があれば、大事なあのこを失わずにすんだのに。