※このお話はJUN様のサイト「真的」で連載されているヘルス嬢物語の番外編です(リンクから飛べます)。
・銀次と蛮が女の子でヘルス嬢。二人は同居中
・赤屍が晴れて銀次の恋人となった後のお話、です。


【スキとタイセツの微妙】


蛮は手元でページをめくっていた雑誌を投げるようにして放り出すと大きく伸びをした。
待合室は薄いピンクと白色でまとめられ、規則正しく並べられた鉢植えの観葉植物が清潔感をかもしだしている。雑誌が置かれた本棚と飾り棚にずらりと並べられた人形。子ども向きにしては上品過ぎる人形たちを見ながら蛮はソファに座りなおした。
ここは赤屍の経営する病院の待合室だ。先ほど最後の一般患者が帰っていき、今では自分と隣に座っている銀次しか待合室にはいなかった。
いやな選択だが仕方がない。
医者とは名ばかりの不動のところに連れて行くわけにもいかず、他に国民保険に入っていない銀次をタダで診察してくれるところといえばここしか思い当たらなかったのだ。
隣で退屈そうにソファに座っている銀次を横目で見る。春らしいピンク色のオフタートルニットにミニスカートをはいてはいるが、その隣には冬物のロングコートがおいてある。蛮がここへ来るときに無理にはおらせたものだった。最近彼女は調子が悪い。もともと風邪気味だったところへこの一月は銀次を指名の客が殺到していて、週の半分は夜に仕事に入っているからだ。もっともそんな状況になってしまったのは蛮にも責任の一端がある。
やっぱり雑誌なんかに紹介させなきゃよかったなあ…。
人気のなくなった待合室で小さくため息をついた。馴染み客の風俗雑誌カメラマンの士度に拝み倒されて、一回だけならと雑誌の取材を受けたのが間違いだった。蛮と二人でグラビアアイドル張りに特集を組まれたものだから指名も一気につくというもの。自分に客がつくのは万々歳だが銀次につくのは許せない。いや、売り上げナンバー1の座が奪われそうだとかそういう問題ではなく、タダでさえ赤屍にさらわれていったのに、さらに得体の知れない客に彼女が指名されることではらわたが煮えくり返りそうなのだ。
どれほど抗議をしても波児は売上増大に笑いが止まらず銀次を入店させたがるし、銀次指名の客はどうにも執着心が強いロリコン嗜好の奴が多くてやたらトラブルがでるから笑師もぐったりしていて役に立たなくなっている。
夏彦の弟は変態だし。
オカマ女装野郎(なぜか召使2名連れ)は思い込みが激しいし。
ストーカーまがいの丸眼鏡が入り待ち出待ちで店の前で居座るし。
コスプレ好きの変態中年社長は店ごと買い取ろうとし始めるし。
何故か自分まで必死になって銀次をガードしなければいけない状況になり、それにもかかわらず銀次は入店時間を増やすといって聞かない。
はっきりいってうんざりだ。頭が痛い。
酷い喧嘩もしたけれど、思いのほか頑固な銀次に押し切られるようにして一月は過ぎたのだが、案の定銀次が体調を崩してしまった。
なんでこんなにしてまで、稼ぎたいんだ?
一つ咳をした銀次の頭をそっと撫でてもう一度ため息をつく。そんな蛮の顔を銀次が見上げてしゅんとした表情をみせた。
「蛮ちゃん…ごめんね…俺のせいだよね」
「なにがだよ?」
「蛮ちゃん、最近疲れてるの俺のせいでしょ?俺の入店からラストまでずっとつきあってくれてるし…。変なお客さんは追っ払ってくれてるし」
「わかってんなら入店すんな」
蛮のぶっきらぼうな返事に銀次が口を結ぶと俯いた。
ほら、いつもこれだ。絶対に聞かない。次に口を開いて言うのは…
「いいの。俺、一人でも大丈夫だから蛮ちゃん休んでいいから」
聞き飽きるほど聞いた銀次の返事に蛮が苦笑する。俯いたままの銀次の頭を小突いてからその柔らかい金髪をぐしゃぐしゃとかきまわした。
「俺よりお前のほうが先に疲れちまってるだろ?だから少しペース落せっての」
「蛮ちゃん…」
「この仕事は身体が一番大事なの、わかってるだろ?健康管理ができないなら入店すんなよな」
見上げてくる大きな薄茶色の瞳がびっくりしたように見開かれている。蛮はおもしろそうに銀次のふわふわした頬をつつきながら続けた。
「金が貯めたいなら、目標分だけ貯めたら店は絶対辞めろ。ずるずる続けるなよ。俺は好きでやってるけど、楽な仕事じゃないし、ハマったら抜け出せなくなる仕事だしな」
最後に銀次の小さな唇を指先で軽く撫でてから蛮はソファに深く座りなおした。
銀次がちゃんとわかってやっているならそれでいいとさんざん考えて出した答えをやっと告げることができて安心したように蛮は真っ白な天井を見上げた。
われながら甘い。
それでも、いくらでも助けてやるから銀次のしたいようにさせてやると決めたからこれで悩むのはもうおしまいにしよう。
安心したと同時に無償に煙草が吸いたくなって、灰皿はないかと周りを見まわした。しかし、案の定灰皿などない。病院だから当然かとバックを引き寄せると中をひっかきまわしながらガムを取り出そうとしていた蛮は、いきなりソファの上に押し倒されて悲鳴を上げた。
「うわっ!銀次!なにしやがる!!ぐええっ!!」
悲鳴というよりうめき声になったのは、勢いよく銀次が押し倒した蛮の上に馬乗りになってきたからだった。
「蛮ちゃん大好きー!!好き好き!!」
悲鳴に近い声で大好きを連発しながら蛮を抱きしめるとそのまま唇を押し付けられる。遠慮なく口内に入り込んだ銀次の舌が自分の舌を絡め取り吸い上げてくるその感触に蛮は一瞬甘い眩暈がした。
…じゃなくて!!こんなところで何をする気なんだ?!銀次!
瞬間流されようとした自分を叱咤して今の状況を把握する。ここは待合室だ。銀次のスキンシップが過剰なのはわかっているが(そのほとんどは蛮が間違った性知識を与えたせいなのだが)、いくらなんでもこれはヤバイ。危険なプレイは好きなほうだが、この手の羞恥プレイは苦手だ。
自分なりの基準で銀次を落ち着かせようと決めた蛮は慌てて銀次をひっぺがそうとした。
はがれない。バカ力を発揮するのは銀次が興奮している証拠だ。
まずい〜!!
焦って足をばたばたさせても、タイトなマイクロミニのスカートがまくれ上がるだけで、銀次の暴挙をとめるには何の役にも立たない。散々唇を吸って満足したのか、銀次がようやく蛮の唇を開放する。上手く吸えなかった空気を思い切り吸い込んでいると、調子に乗った銀次が胸にぐりぐりと頬を押し付けていた。
「こら!!銀次っ!ぎんじー!!何する気だ?!テメー!」
「だって蛮ちゃんのこと好きなんだもん!蛮ちゃん優しいー!大好きー!」
俺のことじゃなくて俺の胸だろう!お前がすきなのは!!
銀次は蛮の胸がすきなのだ。柔らかいから。自分にはないボリュームがあるから。だからいつも異常に蛮の胸に執着はするのだが、今はさすがに蛮も執着して欲しくなかった。
上にのっている銀次のミニスカートがめくれて、腹に当たる彼女の尻の感触が生々しい。
ここじゃなければこのまま銀次をいただいてしまうところなのだが、理性が残っているだけ状況に気が引けてそんな気分になれない。蛮は冷や汗をかきながら胸元で甘える銀次の頭を押しやろうとするのだが、興奮している銀次をなかなか自分の上からどかすことができなくて、今度は甘い眩暈ではなく黒い眩暈がした。
ひえー!!女に犯られる俺ってどうよ?!意外といいシチュエーションなのか?それとも最悪なのか?!それすらわかんねえぞ?!
混乱する蛮がとにかく馬乗りの状態を何とかしようと思いっきり足を跳ね上げたときに、明るい声がかかった。
「あらー、お待たせしすぎちゃったんですか?銀次さん、何してるんです?」
「蛮さん、すっごいセクシーなランジェリー!パープルですか?」
暖かく笑いながらソファでもつれる二人を見ている白衣の天使に、振り向いた銀次が明るく返事をした。
「蛮ちゃんに大好きってしてたの!だって蛮ちゃん優しいんだよ!」
「そういう問題か?!お前ちったあ驚けよ!!」
蛮が激しく突っ込みながら慌ててめくれ上がったスカートを無理な体勢で直しているにもかかわらず、銀次は蛮がどれだけ優しいかを彼女に馬乗りになったまま一生懸命説明していた。病院の看護婦のレナと夏実はそんな異様な光景を眼にしても別に驚くこともなく銀次と楽しく会話を続けている。
やっぱこの病院怪しい…。
蛮は三人の様子に力が吸い取られながら、先ほどの状況がおいしいシチュエーションだったのかどうなのかは後でゆっくり考えようと久し振りにかいた冷や汗を拭った。





「打撲ですね。いわゆるたんこぶです」
 銀次の額に指を這わせながら底冷えのする声で赤屍が診断を下す。
「それはいいんだよ。そうじゃなくて風邪のほうを診察しろっていってんだろうが!」
冷え切る空気にも堪えずに言い放つ蛮に夏実がくすくすと笑い声を上げている。さすがに赤屍の病院で看護婦をやっているだけあって根性は座っているらしい。というか微妙にずれているのかもしれない。
赤屍が相変わらず冷たい眼で銀次の少し後ろに仁王立ちしている蛮を睨みつけた。
「顔ですよ?いくら銀次クンがどかないからといってこんなことしていいと思っているんですか?相変わらず暴力癖が抜けない…」
「うるせえな!さっきから悪いって言ってんだろ!謝ってるじゃねえか!それよりも風邪の診察するのかしねえのかどっちだ?!」
「ねー…二人ともいいかげんにしてよー…。蛮ちゃんも静かにしてよ。さっきは俺が調子に乗っちゃったから悪いんだし。それに赤屍さんも疲れてるなら俺ちゃんと他の病院に行くから」
「俺は静かにしてるぞ!銀次!大丈夫だからな!」
「銀次クン、そんな他の病院になんて貴方をまかせておけるわけないでしょう?!」
言い争いに銀次がため息混じりにこぼすと、二人が慌てて銀次のご機嫌を取り始めるという状況を10分近く続けて、さすがに銀次も疲れてきたのか大きくため息をついた。
「だって、これじゃ全然診察終わらないよー」
ぐずり始めた銀次に赤屍が慌てて、赤くなった額に冷えたタオルを当てた。
「大丈夫ですよ。すぐ終わりますから。それにしてもどうして美堂くんが診察室にいるんですか?関係者は外で待っていてもらわないと」
「お前が変態診察をするかもしれねえから監視が必要だろ?」
まだ言うかという顔の蛮が腕を組んで鼻で笑う。その様子にまた空気に怪しい怒気が混じり始めたなかで銀次が首をかしげた。
「変態診察?なにそれ?」
「そりゃあ、お前、その聴診器でいたずらしたりさー関係ないのに真っ裸にして触診したりするのが変態診察さ、いわゆる医療プレイってやつ?」
不思議そうに振り返った銀次に、赤屍はそーゆーの好きそうだろうとおもしろそうに返事をする蛮に銀次は今度は赤屍を見つめた。
「お医者さんごっこのこと?」
「「え?!」」
愕然とする蛮と言葉に詰まる赤屍が同時にぐっと声を呑みこむ。
「ああ…そうですねえ…」
適当な返事をしながら白々しくタオルをとりかえる赤屍を白い眼で見る。
「…お前って本当に変態なんだな……」
「貴方ほどではありませんよ」
ロリコン変態医者かとがっくりとうな垂れて呟く蛮に赤屍が咳払いをして、銀次に喉を見せるように指示する。
「あーって大きく開いてくださいね」
「アア」
律儀に返事をする銀次に笑いながら喉を見終わると、赤屍はデスクに向かってカルテに何かかき始めた。気を取り直して聞いてみる。
「どうだ?」
「喉が少し荒れてますね。多分風邪でしょうけど。一応性病検査もしておきましょう。定期検査してます?」
「喉はやってねえ」
蛮の答えに少し眉を顰めてからまた赤屍はカルテに何か書き込むと脇に立っていた夏実にそれを渡した。
「このところ、仕事が忙しいようですから気をつけてくださいね。検査はちゃんとして」
「うん。蛮ちゃんにも怒られた」
しょんぼりとする銀次の頭を撫でると赤屍がため息混じりに呟く。
「何度も言ってますけど仕事を辞めて…私のところに来てくれるとうれしいんですけどね」
突然繰り広げられる状況を気にしないプロポーズ大作戦に蛮が引き連れた悲鳴を上げた。
おいおい!この状況で言うことか?!
愕然とする蛮が思わず辺りを見回すとレナが無表情にカルテの整理をしていた。あまり気にしないタイプらしい。
頭を抱えながら今日二度目の不愉快な冷や汗をかいていると、これも状況に無頓着な銀次が赤屍の質問にどう答えようかと口ごもっていた。
「う…」
助けを求めるように振り向かれて、蛮は慌てて俺か?というように自分を指差してみる。銀次のすがるような瞳は可愛らしいがその隣で刺すような視線を向けている赤屍が恐ろしい。
というかそんなことになっているとは知らなかった。
いや、赤屍ならすぐにでもと言いかねないが、こいつの場合の『私のところに来る』というのは監禁とか軟禁とかそういうのじゃないのだろうか。
そんな申し出を受けるなといいたいような。銀次が望むならそのほうが言いというべきなのか。いや、監禁を望むような子に育てた覚えはないぞ?!いやいや、それより、そんなことより店辞めろ!入店すんな!指名受けるな〜!
溢れる感情に口をぱくぱくとさせる蛮に銀次がまた困ったように俯いた。
「あのね…ちょっとまって。俺…ちょっとしたいことがあって…お金貯めたいの。貯めたらお店やめるから…その…そしたら…」
銀次が少し頬を赤らめてもじもじと俯く。その様子に蛮と赤屍が思わず身を乗り出した。
「…あのね…お店やめたら…」
なにいう気だ銀次?!
その続きはオッケーという答えですか?!
緊迫した空気の中で銀次が息を小さく吸い込んで…。

「そのときは俺が面倒見てやる!」
一瞬の沈黙。突然の発言に見開かれた銀次の瞳とふざけんなこの野郎と言わんばかりの赤屍の殺気レーザー視線にさらされながら蛮は自分で自分に呆然としていた。
あ。言っちゃった。
ガサリとレナがカルテをそろえる音が響く中、蛮は乾いた笑い声を上げた。
「…まー…その…なんていうか……そういう話は銀次が保護者である俺とよく相談した後、二人で話せ」
蛮の言葉に銀次は今更われに返ったように真っ赤になった
「そ…そだよね!赤屍さん!ちゃんと話し合わないとダメだよ!俺、ちゃんと考えてちゃんとお返事するから待っててね!!」
銀次にとられた手をぶんぶんと振り回されながら、赤屍が悲しげに待ってますよと呟きつつ細く息を吐いている。その様子を見ながら蛮は自分で言った言葉に頭を掻いていた。
どうやっても割り切れない感情にうんざりしどおした。こんな自分が本当に笑える。銀次に振り回されているあの赤屍も笑えるが、多分自分も同じように笑える状況なんだと思う。蛮は真っ赤になったまま夏実に処置室に連れて行かれる銀次を見ながら大きなため息をついた。
ホントにもう。マジ俺じゃダメ?



END



JUNさまよりギャル銀ゲ〜〜ット!!わーいv
何を隠そう、私は大のギャル銀好き。古今東西のギャル銀を探してまわっては可愛い〜vvと眺めております。
(※ギャル銀とは、女の子銀次のこと)
そしてその中でも一番の好物といっても過言ではないのがJUNさま宅のギャル銀です。むしろ、今思えばこちらのギャル銀で私はギャル銀に嵌ったのかも!ということは、私のギャル銀好きの原点!
そんなJUN製ギャル銀が、雪のアホ蛮銀を供物に降臨なさいました。


蛮おねーさまに好き好き攻撃をする銀次が、幼い獣のようで凶悪に可愛いです。
たじろいている蛮おねーさまも可愛い。やーん、私も蛮おねーさまにスリスリしたーい。
銀次のお客さんたちは皆とても個性的で、名前が出ていないのになぜか全員の顔がはっきりと浮かんでしまうのがオソロシイ。個人的に変態コスプレ中年社長が好きです(笑)。思う存分銀次に貢ぐといい。
銀次の幸せを願っているけれど、赤屍に渡すのはイヤな蛮おねーさま。切ない。何気に蛮おねーさまがとても切ないです。そして銀次は一体何をしたくてお金を貯めているのか、気になることろ。少なくとも帝国ホテルのケーキを買うためではないだろう(笑)。

JUNさま、ありがとうございました!
そして、やっぱりこの病院には死んでもかかりたくありません(笑)。だってレナと夏美…。


銀乃雪

2004.3




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